通販・EC業界の沿革と将来性
2021.10.5 カテゴリ:EC&通販の転職コラム
※画像はイメージです。
日本における通販の歴史を、インターネットの登場前後、スマートフォン登場以降、そして今後に分けて紐解きます。
ネット以前
日本で行われた最初の通販事業は、明治時代にまでさかのぼります。1976年(明治9年)に農学者の津田仙が、雑誌を媒体に植物の種を販売したのが日本における最初の通販とされています。
でも、通販が一つの業界として確立したのは、第二次大戦後。1960年代にカタログでの通販を行う会社が出てきました。当初はリンガフォンやワールドファミリーなどの外資がレコードを販売し注目を集めました。また日本の会社も、主に漫画や一般の雑誌の広告を通じて通信販売を開始。その頃、通販で売られる商品は、楽器や健康器具・美容器具などが特徴的でした。
1970年代に入って、テレビ・ラジオでの通販が開始。いまでいうインフォマーシャルの走りのような生活情報番組もこの頃に始まりました。また、1974年に『ディノス』、1975『ニッセン』、1976年に『ベルメゾン』と、カタログ誌が続々創刊したのもこの頃でした。やや遅れて、1982年には『通販生活』も創刊します。
1990年代には、通信販売専門チャンネルがスタート。1996年に「ショップチャンネル」、2001年に「QVCジャパン」が放送を開始し、注目を集めました。ジャパネットたかたがテレビ通販を始めたのも90年代です。
ネット以後
1990年代半ばにWindows95が発売され、それ以降、徐々にインターネットが隆盛していきます。1990年代終盤から2000年にかけての第一次インターネットバブルといわれる頃、1996年に「楽天市場」がスタート。1999年には「Yahoo!ショッピング」がサービスを開始しました。
そして、2000年11月に、Amazonが書籍を販売するECサイトとして日本への上陸を果たします。その翌年には、Amazonは「Amazonマーケットプレイス」を開始し、通販・ECを行う会社のプラットフォーム化が始まりました。
2000年代前半にブロードバンド化が進んだことによって、インターネットへの常時接続が普及、2004年頃には日本のインターネットユーザーは人口の約半分6000万人を超えたといわれています。インターネットユーザーの増加に伴って、ECサイトやそれを利用する人も徐々に増えていきました。
また、個人のブログや、SNSが注目され始めたのも2000年代前半です。mixiがローンチしたのは2004年の2月でした。この頃から、アフィリエイト広告という新しいチャネルが急速に広まっていくことになります。
スマートフォン時代
2000年代中頃には、スマートフォンが登場します。日本でスマートフォンが普及する契機となったのは、アップルのiPhoneでしょう。2007年に発表されたiPhoneが日本で販売を開始したのは2008年のこと。そこから急速にスマートフォンが普及し、2015年には4000万台を超えました。
人が何か物を買う時の行動として、まず「ネットで検索する」ことが最初の行動になっていきます。これによって、さまざまな業種で、検索連動型広告を中心とするSEMへの投資が増えました。
TwitterやFacebookなどのSNSの普及が加速したことも後押しして、スマートフォンを使ってECサイトで買い物をするという行動が一気に拡大。紙のカタログやテレビ、実店舗で商品を見て、でも買うのはECサイトから、という流れも定着しつつあり、ECプラットフォームのみならず、ECサイトを運営する会社も、サイトのスマホ対応や専用アプリの開発、ECサイトへの導線強化に力を入れるようになりました。
今後の見通し
ECでの買い物利用が増えることによって、購買行動に関するさまざまなデータが取れるようになります。実店舗での小売りでは、何を見てお店に来て、どのように商品を買われたかを定量的に把握するのは難しかったですが、ECでは、何を見てそのサイトに来たのかや、リピート率・リピートまでの期間など、いろいろなデータを集まります。それらを分析して商品開発や広告に活かすことが当たり前になっていくでしょう。それができる人材が求められ始めているほか、データ分析・データ活用をサポートするサービスを提供する通販支援会社も出てきています。
CtoCによる売買が、今後もまだ増加を続けることが予想されます。Yahoo!オークション(ヤフオク)やメルカリがこれらの市場のシェアを大きく占めていますが、今後、新たなプレーヤーが参入してくるのか、従来のBtoCの通販・ECにどのような影響を及ぼすのかは未知数です。
ここから言えるのは、従来の「売り手」と「買い手」がはっきり分かれていた時代から、誰もが「売り手」にも「買い手」にもなる時代に移り変わっているということ。その意味では、InstagramなどのSNSを使ったインフルエンサーマーケティングがもっと盛んになる可能性はあります。テレビに出ているような著名人ではなく、SNS上のコミュニティで影響力のある個人が物を売る上で重要な役割を担うということです。
もう一つ、大きな可能性を持つテーマとして越境ECが挙げられます。言語や国ごとの法律の違いなどでハードルが高かった越境ECですが、それら課題を解決するサービスが少しずつ出てきており、参入するプレーヤーも増えていくことでしょう。少子高齢化で内需が縮小していくこれからの国内市場から、海外へとターゲットを移すのは自然なことであり、今後の日本経済を支える一つの柱になる可能性も秘めています。
通販・EC業界の将来性は?
こうして見てきたように、従来型の流通・小売企業も、紙のカタログやテレビを通じて通販を行ってきた会社もECにチャネルを広げ、メーカー自身もECを使った直販に乗り出すという状況です。そこへさらに、EC専門の新たな通販企業や、通販支援会社が続々と参入しています。商品をつくって売る、この一連の流れにおけるEC化が進行中だということです。
カタログ通販最大手の千趣会は、紙のカタログの発行部数を2016年度の7580万部から、この先5年で約5分の1の1500万部程度にまで減らし、ECに注力すると発表しました。これは千趣会に限った話ではなく、通販業界全体におけるECの比率が高まり、今後ますますECの伸びが業界の成長をドライブする傾向が強まると考えられ、まだまだ伸びしろの大きな業界だと言えるでしょう。