最高益の暗黒時代から 唯一無二の“会える通販”へ 株式会社ランクアップ 日高由紀子 副社長
2022.12.13 カテゴリ:d2c企業インタビュー
目次
暗黒時代
私たちランクアップにとって転機となったのが、最高益の時の暗黒時代です。
最高益でしたので、周囲からは「売上が伸びていて良い会社ですね」と言っていただいたのですが、実際の組織状態はボロボロで…それが辛かったですね。
とにかく社員と意見が合わなかったのです。
社長と私が「〇〇をやろう!」と提案すると、「それってやる意味ありますか?」といつもしらけムードになっていました。
-何が原因でそのような関係だったのでしょうか。
私達は、社員に提案しているつもりでも、当時の社員からすると、「どうせ自分たち(社長と私)がやりたいこと、やるんでしょ」というような…
要は私たちと社員の間に距離があったのです。当時は全然気づけていませんでしたが。
その頃、社長と私で社員一人一人と面談していたんです。そこで、意見を聞いて改善できるものは改善していたつもりでした。
でもよくよく考えると、自分たちも改善したい!ということだけ実現していたんですよね。それで、私たちは社員の改善提案を受け入れているつもりでした。
でも、社員達からすると「はぐらかされた…」となりますよね。
そういったことで。距離が生まれていたのだと思います。
その当時から働いているメンバーは、びっくりするほど別人です。いかに当時の私たちが未熟だったかを痛感します。
-何から変えていったのでしょうか。
当時、有名な人事コンサルタントの研修はほぼ全て受けましたね。
結局、一番大事だったのが、「何がやりたいかということの明確化」でした。
つまり企業理念、会社の大事にする価値観、行動指針の策定ですね。
-当時はなかったのでしょうか。
いえ、当時もありました。
ありましたが、2005年の創業当初のミッションは、それこそ、ネズミが出るようなビルの一室からスタートしましたので、こんな会社を選んで入社してくれた人達には、良い会社だと思ってもらいたいというのが全面に出ていて。
「お客様もお取引先もそして何より社員を幸せにします」というものだったのです。
-良い理念だと思いますが。
そうですよね。けれども、社員から「私は幸せじゃないです」と言われてしまうことがありました。結局、幸せの定義は人によって違うのですよね。
社員の幸せを会社の価値観に入れるのは難しいと思いました。
もちろん、「ここでいう幸せとは〇〇ということです。」と定義づければよかったのですが。
-なるほど。
それで、次に作ったミッションは
「私たちはお客様の幸せの為に存在します。その為には、私たちの人間力の向上に努めます」というものになりました。
私たちは、自分たちの製品で、お客様を幸せにする為に存在しているので、
その為には、私たちが自ら人間力を上げるというものに変更しました。
でも、ここでも暗黒時代が反映されているのです笑
全然いうことを聞かない社員たちに「人間力向上しなさい」というメッセージなんですよね。
今は、「あなたでしょ!」って突っ込み入れたい気持ちです。
-いつから現在のものになったのでしょうか。
いくつかの改定を経て、現在の「たった一人の悩みを解決することで、世界中の人たちの幸せに貢献する」に変わったのは3年前ですね。
今までは「女性を」というキーワードが必ずあったのですが、外したこともまた、大きな変化の1つになります。
創業時は、社長と私でスタートして、とにかく自分たちの悩みを解決したい!と自分たちのような女性にフォーカスしていましたが、男性向け製品を始めたことや、男性社員も増えてきたことがありますね。
-なるほど。
あとは、暗黒時代を抜けた後ですが、「挑戦」という行動指針が入るようになりました。
とにかく新しい挑戦を繰り返すことで、進化出来るという指針です。
それまでは、いわゆる安定企業のようになってしまっていました。売上目標もなかったので。
-売上目標がないのですか。
はい。創業6~7年くらいありませんでした。
私も代表も元々広告代理店出身なので、昔のトラウマで月末の数字の追い込みのようなものが嫌で(笑)
それに、目標を決めてしまうと、そこから逆算しますよね。
そうなると、未達成の場合「何かを売らなければ」という思考になってしまうことが怖かったのです。欲しい人に欲しいものを売りたかったので。
売上目標を作らなくても、売上は伸びていきました。
-ミッションだけで、売上が伸びていくのは凄いですね。
代表と私はそれでよかったのです。お客様が増え、売上が上がるというのは、それが私たちがやってきた事へのお客様の評価であると思っていましたから。
でも、社員たちは、自分たちが頑張った仕事が、どれだけの成果を上げたのか?振り返ることができず、自分の仕事にやりがいを感じにくくなっていました。
そういった社員の声を聞いて、初めて売上目標を作りました。
-そうだったのですね。
今は、目標はありますが、3か年計画というものは作らないようにしています。
それはなぜかというと、私たちは「たった一人の悩みを解決できる」製品を開発して初めて
「私たち、こんな悩みをこのように解決できる製品作ったんですけど、欲しい方はいらっしゃいますか」とお客様を探していくビジネスモデルなのです。
今売上120億ですが、「3年後200億にしよう」という目標を持ってしまうと、新製品や新事業で売上計画を立てなければなりません。
まだ作ってもいない製品に売上目標を立てるのはたった一人の悩みを解決できる製品を作るという開発ポリシーを持つ私たちにとって違和感があるんです。
開発動機のある製品しか販売しない
私たちはとにかくミッションである「たった一人の悩みを解決する」製品しか生み出さないと徹底しています。
そのため、実は、製品開発にも期限を設けていないのです。本当に良いものが出来るまで、納得がいく、悩みが解決できる製品になるまで、発売はしないのです。
11月に発売したボディシャンプーは、10年かかりました。
-10年ですか。
はい。私たちの製品は、自分の悩みを解決するものでなければいけないし、他で買えるものは販売する必要がありませんので。
だから、製品開発担当者も諦めて途中で辞めてしまうこともあります。
ボディシャンプーは4代目の社員が完成させました。
-製品開発担当者が変わるのですね。
はい。変わることが良い方向にいくこともあります。
最近発売した〈アクナル〉という皮脂と毛穴に着目したスキンケアブランドがあります。それも、新卒社員の悩みがニキビだったんです。
「どうしても私のニキビが治るものを作りたい!」と言って、3年半かけて作りました。
彼女自身、〈アクナル〉を使用してからニキビが全然なくなったのです。
-「開発動機」が本当にある方が作っていらっしゃるから、本当に良い製品が生まれるのですね。
そうなんです。本人が悩んでいるので、製品開発のゴールが明確なんですよ。
〈アクナル〉の場合、開発者のニキビが治るかどうか。
彼女はたくさんの製品を試しても治らなかった原因を調べるために、ニキビ日記をつけて、試作品を試しながら、「日中にニキビは悪化する」ことに行きつき、皮脂の酸化に着目した製品の開発に成功したんです。
今は自分で作った〈アクナル〉のおかげでとっても肌がキレイになって、昔の写真を見せると皆に驚かれています。
-すごいですね。
-会社の3か年計画は作っていないとのことでしたが、直近の目標はどのようなものがあるのでしょうか。
1か年計画はあります。メインで見ているのは、稼働顧客数ですね。
稼働顧客数は、今のお客様からの偏差値だと思っています。
ですから、顧客層に分けて稼働顧客人数や維持率は毎朝朝礼で全社員に共有しています。
ここ最近は、顧客維持率がどんどん上がっていて、非常にいい状態だと思います。
会える通販
私たちランクアップの特徴として、約3年前から「会える通販」を打ち出しています。
-会える通販ですか。
はい。初めてお客様イベントを実施したのが約5年前で、私たちの製品をご愛用いただいているお客様に直接お会いすることでたくさんの発見があったんです。
何より、お客様に「マナラに出合えて本当に良かった!」とおっしゃっていただけて、私たちの存在意義を改めて実感できる機会になりました。
-そうなのですね。
そこから、少しずつお客様に直接お会いする機会を増やして、3年前に私たちは通信販売だけど、お客様に直接会える「会える通販」を掲げたんです。
そしてその象徴となる部署、「ファンが一番」チーム、通称ファン一が立ち上がりました。
-「ファン一」チームですか。
このチームのおかげで、たくさんのイベントを通じてお客様に開発秘話など直接私たちの想いを伝えることで、「この製品が好きだから買う」ではなく、「マナラ(ランクアップ)だから買う」というお客様が増えています。
中には、ほとんどの社員が名前を言えるお客様も何人もいらして、「これだったら〇〇様、喜んでくださるかも!」と会議でもお客様のお名前が上がることは、しょっちゅうです。
-こちらのオフィスにいらっしゃるのですか。
はい。コロナ前は毎週お客様がいらっしゃっていました。最近は1~2か月に一度お客様にご来社いただいています。
お会いすると、「キャー!お久しぶりですー!!」って盛りあがっちゃうくらい、嬉しくて。
お互いに「痩せましたね!」とか「髪型変えましたね!」という話をするお客様がたくさんいます。
-すごいですね。
コロナ禍ではオンラインイベント中心でしたが、今後は少しずつリアルイベントも復活させています。
先日は、「マナラで人生変わりましたコンテスト」を開催して、100名以上の方からご応募いただき、リアルイベントでグランプリの授賞式を行いました。
-これは御社の大きな強みですね。
はい。やはりお会いすると、愛が深まるといいますか…お客様自身がどんどんお綺麗になられて、
先日は、「マナラのおかげで毛穴がなくなりました!」とか、「マナラのおかげでキレイになって、再婚できました!」なんて嬉しいお声をたくさんいただいて…お客様の声が私たちの励みになっています。
-本当にすごいですね。
先日、D2CイベントでD2Cの他社様とお話した時に、「会える通販」のお話をしたら、
「すごいね」「そんなのマナラさんでしかやれないよ」と言っていただきました。
「会える通販」は弊社の特徴なのだと思います。
-本当に大きな特徴ですね。
ありがとうございます!さらに今期からは「熱狂的なファンに支えられる会社になる」という目標を掲げています。
私たちの考える熱狂的なファンとはサポーターというより、私たち社員に近しい存在なのです。
理想を叶えるために共に走っていく同士のような、そんなお客様をどんどん増やしていき、そういう人達をどんどん増やしていけたらいいなと思います。
-そうなのですね。
ランクアップの社員は、「ファン一」チームでなくても、人事や総務でもお客様の声を知っています。
(人事の瀧澤様)
そうですね。毎朝、イベントでのお客様の声の報告を聞いています。
「お客様にこんなことを言っていただいて感動しました!」というような社員の声を聞かせてもらっています。
あとは、チャットなどでお客様の声を共有しているので、お客様の声は常に把握しやすい状態で大変ありがたいです。
人事としても、共有のおかげで、例えば中途採用時にリアルなお客様のお声のお話しができるので助かっています。
-そうなのですね。
通販の会社って、どうしてもお客様と遠いじゃないですか。
社員も今やっている仕事が繋がっている先がどうしても見えにくいですよね。
なので、私たちはマーケティングや販促だけでなく、人事や管理部も全部含めたワンチームでお客様の声を共有していきたいと思っています。
-ありがとうございます。
-採用では、どのような方を採っていきたいのでしょうか。
求める人材
私たちは、新規のお客様も、将来ロイヤルカスタマーになる可能性があるお客様を増やしていきたいと考えています。
そのため、新規のCPAだけではなく、LTVとのバランスを媒体別に細かく見ています。
ここ2年で運用の方法もだいぶ変わりました。
約3年前までは広告代理店さんにほとんどお願いしていましたが、少しずつインハウス化に移行しています。
どの会社さんもそうだと思いますが、業界全体的に新規のお客様を増やすことが厳しくなり、その中で代理店さんに全てお任せしていると、改善点の発見が遅れることがあったりしましたので。
インハウスに切り替えてから、新規のCPAとLTVの相関関係がすごく良くわかるようになったのです。新しいお客様を増やすことは、3年前に比べると苦労していますが、その後の継続率まで細かく見ることが出来るようになったので、継続率は格段に改善されました。
-そうなのですね。
自分たちでやれるようになると、バナーやLPの改善が5倍くらいスピードアップしています。
マーケティングの数字を管理している担当が、自分でバナーを作っていたりするので、改善のスピードが上がるのだと思います。
そして、自分たちがやったテストの結果を、広告代理店さんに展開することで、さらに代理店さんがブラッシュアップしてくださって、相乗効果が出ています。
-なるほど。
代表と私が広告代理店出身だったこともあり、費用対効果には特にこだわっていたこともあり、他社の実績重視。
だから、先陣切って新しい施策をチャレンジすることができなかったんです。
でも、今は最低限のコストやリスクを抑えた条件でテストできるようになり、新しいチャレンジもどんどんできるようになりました。
-それは良い改革でしたね。
はい。あとは社員の成長が著しくて。
自分たちで毎日数字を見ているので、格段に経験値が上がっています。
-ありがとうございます。
-どのような性格の方が御社で活躍されていらっしゃいますか。
会社の価値観として掲げている「誠実」「挑戦」「明るく元気」というスピリット、行動指針をとても大切にしているので、活躍している社員はこれに当てはまっています。
行動指針は掲げるだけではなくて全社研修を定期的に実施して、インプットだけではなくアウトプットする場を設けています。
昇格要件にもこの価値観に基づく項目があり、
結果的に、「誠実」「挑戦」「明るく元気」の方が活躍しやすい環境だと思います。
-中途採用される時も重視されていますか
はい、どんなにスキルが高くても、会社の価値観に合わなかったら採用は難しいです。
-女性社員が多い印象ですが、男性社員もご活躍されていますか。
採用の時に、性別は意識していません。
化粧品会社ですので、どうしても女性社員の割合がかなり多いですが、最近は男性社員も増えてきて、皆活躍しています。
広告代理店の方は、とっても面白いと思います。
私も広告代理店だったので分かりますが、どうしても新規獲得した以降は領域が違うので、それ以上なかなか提案できなかったり、分からないことも多いと思います。
お客様の経緯を追うことができますので、新規の入り口の指標だけではなく、どの施策、媒体、クリエイティブがロイヤルカスタマーを増やすことにつながるか細かく検証できますし、自分の作った広告物について直接お客様にヒアリングできる環境もあります。
また、新しい製品を広告商材に育てるためのテストや、新ブランドも少しずつですが増えており、ゼロからのスタートを経験できる可能性もあります。
広告代理店出身の方や、広告物のライティングを含めた制作の経験がある方にはやりがいのある環境だと思います。
-ありがとうございます。本日は以上になります。
-お忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございました。