ECH株式会社 井関 貴博 社長 インタビュー
2022.7.4 カテゴリ:d2c企業インタビュー
ECH株式会社 井関 貴博 社長
1975年1月 高知県生まれ。2006年2月にECH株式会社の前身の株式会社ECホールディングスを創業。メーカーのEコマース支援からスタート。500以上のECサイト支援で培ったノウハウを活かし、現在はD2C事業を強化し、クリームシャンプー「KAMIKA」がヒット。自社ブランドの商品企画から販売までをメインで行っている。
目次
個性を最大限発揮する環境
-まずは、ECH株式会社はどのような会社ですか。
今期でEC業界17年目に入りまして、元々はメーカーのECサイト制作や運用代行からスタートしました。
500以上のECサイトの支援を行い、そこで得たノウハウを活かして、今は主にD2C事業、BtoCと言われる分野に力を入れてやっています。
D2C事業では、一番ヒットした「KAMIKA」というクリームシャンプーがあります。その他にグループ全体として、サプリメントなどの健康食品だったり、化粧品だったり、いわゆる美容系健康系商品のD2C事業をやっています。
-ECH株式会社の魅力を教えてください。
魅力は、17年という長い期間、EC業界で培ってきたノウハウがあり、ECやD2Cが好きな人材が集まっています。
長く勤めている社員も多いので、D2Cという分野では、PDCAサイクルを回す仕組みができつつあり、D2Cが好きな人であれば、ジョインしていただけたら楽しめる環境ではないかなと思います。
-長く勤めていらっしゃる方が多くいらっしゃるとのことですが、御社で活躍されている社員の方に共通していることは何ですか。
こればかりはもうバラバラですね。
経営スタイルとしては、「個人個人の個性を最大限発揮してもらう」というスタイルをとっています。
なので「本当に寡黙にクリエイティブを追求している」人もいれば、それこそ代理店さんとの交渉が好きで、「社内外でコミュニケーションを取り、周りを巻き込みながら一緒に盛り上げていく」という人もいて、本当にバラバラなんです。
社員を型にはめるというか、そういうことはしていないので、変な話ですが、まったくコミュニケーションがとれない人もいれば、明るくコミュニケーションが得意な人もいて、本当に様々です。
-井関社長が一緒に働きたい社員像はありますか。
昔、それこそ10年以上前はありました。
明るくて、自頭が良くて、コミュニケーション能力が高くて、みんなで一丸となってチームワークが出来る人…というようなのが大事な要素でした。BtoBの仕事であったら、それでよかったと思います。
D2C事業、BtoCを行う今はそういうのはなくなりました。
人それぞれ得意な分野があって、例えばチームワークとかコミュニケーションは苦手なのだけれど、商品企画をやったらピカイチとか、特にこのD2Cの分野は、光る能力というのが非常に大事だと考えるようになりました。
マネジメントでも、一般的には、社員に部下を持ってもらってマネジメントしてもらうのが普通の流れだと思いますが、
マネジメントが苦手で苦痛であるが為に自分の能力が発揮できなくて、という人に余計なこと求めることの方がむしろマイナスになるなと思い、自分のやりたいこと、極めたいことに集中してもらうようにしています。
D2C事業では、ヒットをさせれば勝ち、どんな良いものを作っても売れなかったら負けなので、チームワークやマネジメントの文化はそもそもすごい大事なんですけど、それ以上に個人の能力を発揮させてあげられるような環境づくりというのを軸にしています。
同じBtoCの商売で、例えば、ヒットする映画やゲームは、1人の天才プロデューサーがヒットを産んでいたりしますよね。
もちろん周りにはしっかりとサポートをされている人たちがいるのでしょう。
でも、1番大事なことって、ヒットを出すことであって。ヒットを出すプロデューサーのような光る人が、うちの会社で自分の力を発揮できる環境にしたいと思っています。
-なるほど。ありがとうございます。
すみません、話すのが早くて。月に1回朝礼をやっているのですが、「早口で何言っているのかわからない」と言われたりしています(笑)
-BtoBの事業からBtoCの事業が中心になり、変化したということですか。
そうですね。BtoBの事業が中心の時は、型にはめた経営もしていましたが、今は天才的なプロデューサーが活躍できる環境をつくりたい、熱心に取り組んでくれる社員を応援したいと思っています。
-活躍できる環境づくりということですが、特徴的な制度などはございますか?
人事の制度として自分のやりたいこと、極めたいことに集中できるプロフェッショナル職を用意しています。
また、今はグループ会社が5社ありますが、グループ会社化し、社長をやっていただいて、そこの会社を完全にお任せするようなこともしています。その場合は、経営についてなど相談ができ、応えてもらえる環境がある中で、経営を完全にお任せしています。
ー具体的なキャリアアップ例を教えてください。
中途入社でご入社されて、経験を積んで事業部長になりマネジメントを行って、子会社の社長になった人がいます。
あとは、WEBマーケティング部は、BtoCで1番大事な事業部なんですけど、全く未経験でご入社されて、リスティング広告等日々失敗もしながら経験し、今は部下を持ってMAX3億円くらい予算を回している方もいます。
失敗しながらも経験を積んでキャリアアップしていって欲しいですね。
ー行動指針ハニカム6は採用される上で意識されたりしますか?
採用に関しては、ハニカム6は最終的には見ていませんが、入社後の最低限の行動指針として意識して欲しいと思っています。
社員みな、個性を活かしつつも、根底としてハニカム6を守っているので、ハニカム6に共感していただける方に入社いただきたいです。
ー研修制度などはございますか。
中途入社の方には、部署毎にOJTをしています。基本的にはまず経験を積み、失敗しながら学んでいっていただきます。
CS(カスタマーセンター)は、商品についてなど動画で研修を行う仕組みがあります。
ー現在とこれからのECHの展望についてお話いただけますか
現在のD2C業界は、競合環境が激しい状況で、規制も強く、どちらかというと逆風の業界なんです。最近では、グループ会社をM&Aして、いくつかの会社に新しくグループに入っていただいています。一緒にやってくれる仲間とブランドを増やし、最終的には「KAMIKA」に続くヒットブランドを狙っています。
それから、直近で最も力を入れているのは機械化、AIです。顧客対応にAIチャットポットを導入するなど、どんどんRPA(AI駆動型ロボティック・プロセス・オートメーション)化しています。
今までは人が手を動かしてやっていた、不正注文のチェックや配送会社とのやりとりなども機械化しました。
それによって社員が他の業務に集中することができています。
ー社長の変わらない想い、みたいなのはありますか?
3つありまして、
1つ目は会社を継続させたい。
2つ目は私1人の力では大きなことは実現できないので、仲間が最大限に活躍できる環境を作りたい。
3つ目は長く続くブランドをつくっていきたいと思っています。
おっとりした会社
ー求職者の方にメッセージをお願いします。
今は働き方が変わってきていて、必ずしも弊社も正社員だけでなく、業務委託の方とかアルバイトの方も含めて、色んな形態で関わってもらうことが増えてきました。
ECHという看板の中で、一生懸命になって経験し、成長が出来ると思える人、お互いにWINWINになれる人と一緒に働けたらいいなと今は思っています。
うちの会社は、おっとりしたいい会社だと思います。
ーおっとりした、というのはそのような社風を目指していたのですか?
目指してはいないですけど、自分でやりたい!と思うことが、やっぱり1番能力が発揮できると思っています。私に言われてどうこうよりも、自分の意思が重要かなと考えています。
なので、基本的に私から指示を出したり、意見を伝えることはなく、権限委譲しています。
例えば、採用も、実はある時期から社員に任せています。その部署に所属する人が「一緒に働きたい」と思う人と働いた方がベストだと思っていて。
社長が決めるよりも自分で決めた方が責任感も生まれていて、自分が採用した人には、自然と自分が教育をしていかなければと思ってくれています。
会社としては、それなりの規模の事業をやっているので、様々なミスも起こるわけです。
例えば10万円の損出があった時に、「給料から引いてください」と申し出があったりするんです。こちらは「いいよ、いいよ、そんなミスなんて起きるから!」と言いますが、それくらい自分ごととして責任感を持ってやっているんです。
D2Cは成熟業界
ー最後に社長がお考えになられるEC業界の今後の動向、展望をお聞かせいただけますか。
EC化率が上がっていくので、全体でいくと今後もどんどん伸びていく業界であることは間違いないです。が、それ以上に参入が多い業界でもあります。特にD2Cでの競争は激化していくだろうなと思っています。
やはりヒットを出すことも難しいですし、それを維持し続けていくのも非常に難しくなってくると思います。
昔は、1つの商品を作るのに、効率的にやれば3,000万円くらい資金があれば商品が立ち上がっていったのですが、今は正直1億円があっても足りないくらい資金も必要になっています。
D2Cは成熟している業界だと思います。
ーD2Cは成熟業界なんですね。
はい。爆発的にヒットした商品が出たら、すぐに真似ができるOEMの会社もたくさんあり、D2Cのマーケティングをやっている広告代理店のスキルも上がり、
CRMも良いものがあればすぐに情報が流通、タレントさんの使い方もどんどん上手くなり、取り巻く環境がハイレベルで、まさに成熟期。難しい業界だなと思います。
そんな中でどうやったら勝てるかということを考え続けていかなければいけません。当たり前のことを当たり前にしても勝てない業界です。
「KAMIKA」ヒットの理由
ーそんな中「KAMIKA」がヒットした要因はなんだと思いますか。
元々ヘアケア商品でD2Cを行っていた為、顧客基盤があり、お客様の髪に対する悩みをキャッチしていました。お客様の直接の声を参考にしながら商品を作ったので、商品力が高かったことが要因だと思います。
それから、「KAMIKA」を始めたのが2019年だったのですが、ちょうど40、50、60代の女性がスマホで物を買う時代に突入したタイミングと合いました。それも大きな要因だと思います。
商品力とタイミングで、ものすごく売れました。「ここしかない」と思い、資金繰りに厳しいこともありましたが、アクセルを踏んでプロモーションを行いました。
ーアクセルを踏んだのも最高のタイミングだったんですね。
はい。MAXの時は「KAMIKA」だけで月に3万人以上の新しいお客様にご購入いただきました。
資金繰りが厳しい時は、広告代理店さんや物流倉庫さんに支払いのサイクルを遅くしていただいたり、ご協力をしてもらいました。
ーちょうどその時期は、会議室に配送予定のダンボールが積んでありましたね。
そうでしたね。商品開発担当も、マーケティング部も、みんなで一丸となって注文の電話を受けて、梱包して配送していました。
みなWEBマーケティングをしたり、LP作りながらお客様からのお電話を受けていましたね。
今は、さすがに職業分担をしましたけれども、当時、D2C事業が一気に伸びていく時代はそういう感じでやっていました。それはそれですごい楽しかったです。
その経験があるからか、社員の人たちはCS(カスタマーサポート)の気持ちがわかるようで、CSの立場を考えてマーケティングやCRMを企画するんです。
新しい企画が出ても、「CSに迷惑がかかるからやめよう」というジャッジが起こることがあります。
ーCSの立場を理解されている社員の方が多いんですね。
はい。それはすごくいいことでもありますが、たまに疑問に思うこともあり、失敗しながら経験していければいいかなと思っています。
BtoC事業の新規担当とCRM担当って、例えると「水と油」なんです。部署毎に意見が合わないのは当たり前ですよね。
だけど、うちの会社はみんなで一丸となって電話を受けて、梱包配送した経験があるからか、部署毎の調和が取れている会社だと思います。
ありがとうございます。本日は以上になります。
お忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございました。