AIによる個人情報流出、EC企業が気を付けることは?原因・対策・社内ルールを解説【2026年最新】

公開日:2026.10.22  カテゴリ:EC通販キャリア人材採用コラム

EC企業がAIによる個人情報流出を防ぐために最優先で取り組むべきことは、「AIに入力してはいけない情報を社内ルールで明確にする」「入力データが学習に使われない法人向けAIを選ぶ」「委託先やツール連携の権限を最小限にする」の3点です。EC企業は氏名・住所・電話番号・購入履歴など大量の顧客情報を扱うため、生成AIの便利さと引き換えに、一度の入力ミスが重大な漏えい事故につながりかねません。本記事では、EC現場で起きやすいAI経由の個人情報流出の原因と、今日から始められる対策をEC・通販業界特化型エージェントの視点で解説します。

この記事からわかること
  • なぜ今、EC企業がAIによる個人情報流出に注意すべきなのか
  • EC現場でAIから個人情報が漏れる5つの原因
  • 個人情報保護法上の注意点
  • EC企業が今すぐ取り組むべき5つの対策と社内ルール例
  • AIガバナンスを担える人材の確保方法

なぜ今、EC企業はAIによる個人情報流出に注意すべきなのか?

結論: 生成AIの業務利用が急速に広がる一方で、AIをめぐる情報漏えいリスクが国の公的機関からも「組織が警戒すべき上位の脅威」と位置づけられたためです。

IPA(情報処理推進機構)が2026年1月に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」の組織編では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選出され、いきなり3位に入りました。このリスクには、AIへの理解不足による情報漏えいや、生成結果の確認不足による問題などが含まれています。

また、JIPDECとアイ・ティ・アールが国内企業1,110社を対象に行った「企業IT利活用動向調査2025」でも、生成AIを全社的に利用している企業の不安として最も多かったのは「個人情報を含む社内の機密情報がAIに入力され、外部に漏れること」(59.9%)でした。

EC企業は、商品説明文の作成・レビュー分析・問い合わせ対応・CRM施策の企画など、生成AIを活用しやすい業務が多い業界です。そのぶん顧客データとAIが接する機会も多く、他業界以上にルール整備が急務といえます。

EC現場でAIから個人情報が漏れる主な原因は?

結論: 「従業員の入力」「会社が把握していないAI利用(シャドーAI)」「委託先の利用」「ツール連携の権限設定」「AIサービス側の不具合」の5つが代表的な原因です。

原因 EC現場で起きやすい例 主なリスク
①従業員の入力 クレーム対応の返信文を作るため、顧客の氏名・注文番号・住所ごと無料AIに貼り付ける 入力内容がAIの学習に使われ、外部に出力されるおそれ
②シャドーAI 会社が許可していない個人アカウントのAIで、受注CSVを集計・分析する 会社がデータの所在を把握できず、事故時に追跡できない
③委託先の利用 コールセンターや運用代行会社の担当者が、預けた顧客データを未承認のAIに入力する 委託元であるEC企業も監督責任を問われる
④ツール連携の権限 AIチャットボットやAIエージェントに、顧客DBやカート情報へ広い閲覧権限を与えてしまう 不正な指示(プロンプトインジェクション)で他人の情報を回答してしまう
⑤サービス側の不具合 利用中のAIサービスでバグや設定ミスが発生する 自社に落ち度がなくても情報が露出する可能性

特に注意したいのが②シャドーAIと③委託先です。「AIは禁止」と一律に決めるだけでは、現場が業務効率を求めて隠れて個人アカウントを使い、かえって管理が効かなくなるケースが少なくありません。

AIに顧客情報を入力すると法律違反になるのか?

結論: 入力すること自体が直ちに違法とは限りませんが、使い方によっては個人情報保護法に違反する可能性があります。

個人情報保護委員会は2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」を公表し、企業(個人情報取扱事業者)向けに次の2点を示しています。

  • 個人情報を含む内容をAIに入力する場合は、その個人情報の利用目的の範囲内かどうかを十分に確認すること
  • 本人の同意なく個人データを入力し、そのデータが回答の出力以外(AIの学習など)に使われる場合は法違反となる可能性があるため、AI事業者が学習に利用しないことなどを確認すること

つまりEC企業にとっては、「どのAIサービスを使うか(学習に使われない設定か)」と「何のために入力するか」をセットで管理することが法的リスクを下げる基本になります。

EC企業が今すぐ取り組むべき対策は?

結論: 「入力ルールの明文化」「法人向けAIの選定」「委託先管理」「権限の最小化」「研修とログ確認」の5つを順番に整えることです。

1. 「入力してはいけない情報」を社内ルールで明文化する

「個人情報に注意」という抽象的なルールでは現場は判断できません。EC業務に即して、入力してよい情報・いけない情報を具体的に一覧化しましょう。

区分 EC業務での具体例
入力NG 顧客の氏名・住所・電話番号・メールアドレス、注文番号と紐づいた購入履歴、クレジットカード情報、会員ID、健康食品・化粧品の問診や体質に関する情報、応募者の履歴書
加工すればOK 個人を特定できる部分を削除・置き換えたレビュー文、問い合わせ内容、統計化した売上・購買データ
入力OK 公開済みの商品情報、商品説明文のたたき台、広告コピー案、一般的なマーケティングの質問

2. 入力データが学習に使われない法人向けAIを選ぶ

無料の個人向けプランは、設定によっては入力内容がAIの改善に利用される場合があります。会社として利用するAIを指定し、学習に使われない法人向けプランや設定を選ぶことで、シャドーAIを減らしつつ安全な代替手段を提供できます。

3. 委託先・運用代行会社のAI利用ルールを確認する

モール運用代行・コールセンター・物流倉庫など、EC企業は顧客データを外部に預ける場面が多くあります。契約書や委託先チェックシートに「生成AIの利用可否・利用するサービス名・学習設定」の項目を追加しましょう。

4. AIチャットボット・AIエージェントの権限を最小限にする

接客AIや業務自動化AIを導入する際は、必要なデータだけにアクセスできる設計が基本です。「注文状況の確認には本人認証を必須にする」「顧客DB全体への閲覧権限を与えない」といった設計を導入前に確認してください。

5. 定期的な研修と利用ログの確認を行う

ルールは作っただけでは定着しません。年1〜2回の研修と、法人向けAIの管理画面での利用ログ確認を組み合わせ、「うっかり入力」を早期に発見できる体制をつくりましょう。

採用・人事業務でAIを使うときの注意点は?

結論: 応募者の履歴書や職務経歴書も個人情報のため、顧客データと同じルールで扱う必要があります。

「書類選考を効率化したい」と、応募書類をそのまま無料AIに読み込ませて要約・評価させるケースが増えています。しかし応募者は、AIサービスへの提供を前提に書類を出しているわけではありません。AIで書類を処理する場合は、氏名・連絡先などを伏せる、学習に使われない法人向けAIを使う、プライバシーポリシーで利用目的を明示するといった対応が必要です。

AIガバナンスを担える人材はどう確保すればいい?

結論: 「EC実務」と「データ管理・AI活用」の両方を理解する人材を、CRM・データ分析・EC運営責任者のポジションで採用するのが近道です。

AIのルール作りは、情報システム部門だけでは現場に浸透しにくいのが実情です。顧客データの流れ(カート→受注→CRM→広告)を理解し、「どこでAIを使えば安全に成果が出るか」を設計できるEC人材が社内にいるかどうかで、AI活用のスピードと安全性は大きく変わります。

採用ポジション AI・個人情報管理で期待できる役割
CRM・CDP担当 顧客データの管理範囲・同意取得の設計、AIで扱ってよいデータの線引き
EC運営責任者・店長 現場業務に合わせたAI利用ルールの策定・運用、委託先管理
データアナリスト 個人を特定しない形へのデータ加工、AI分析環境の構築

通販人材エージェントでは、2010年からEC・通販業界に特化して即戦力人材の紹介を行っており、CRM・データ活用・EC運営の経験者を多数ご紹介しています。AI時代の顧客データ管理を任せられる人材をお探しの企業様は、お気軽にご相談ください。

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まとめ

AIによる個人情報流出は、IPAの10大脅威で3位に入るほど企業にとって身近なリスクになりました。大量の顧客情報を扱うEC企業は、「AIを禁止する」のではなく、入力ルールの明文化・法人向けAIの選定・委託先管理・権限の最小化・研修とログ確認の5つで「安全に使える仕組み」を整えることが重要です。そして、その仕組みを現場で回せるEC人材の確保が、AI時代の競争力を左右します。

よくある質問

ChatGPTなどの生成AIに顧客情報を入力してもいいですか?

原則として、氏名・住所・連絡先など個人を特定できる情報は入力すべきではありません。どうしても扱う場合は、利用目的の範囲内であることを確認し、入力データが学習に使われない法人向けプランを利用したうえで、個人を特定できる部分を伏せて入力しましょう。

生成AIの利用を全面禁止すれば安全ですか?

全面禁止は、現場が個人アカウントで隠れてAIを使う「シャドーAI」を招きやすく、かえって管理が難しくなる場合があります。会社として安全なAIを指定し、入力ルールとセットで利用を認める方が現実的です。

委託先がAIで情報を漏らした場合、EC企業にも責任はありますか?

個人情報保護法では、委託元にも委託先を適切に監督する義務があります。委託契約やチェックシートに生成AIの利用可否・利用サービス・学習設定の確認項目を入れておくことが重要です。

AIのルール作りは誰が担当すべきですか?

情報システム部門だけでなく、顧客データの流れと現場業務を理解しているEC運営責任者やCRM担当者が加わるのが理想です。社内に適任者がいない場合は、EC実務とデータ管理の両方に強い人材の採用を検討しましょう。

参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026」/個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)/JIPDEC・ITR「企業IT利活用動向調査2025」

監修者プロフィール画像
監修者
寺田 勝人
株式会社ニュースター
代表取締役

 1998年同志社大学卒業後、リクルートにて8年間、ITベンチャーおよびエグゼクティブ領域の人材紹介に従事。その後、クライアントであった株式会社出前館へ営業責任者として参画し、執行役員として上場を経験。
 2010年ニュースター設立。2012年よりEC・通販業界特化の人材紹介事業を本格始動。 現場の最前線から経営層までを経験したからこそ分かる「企業の真の課題」と「候補者の市場価値」を見極め、一時的な転職にとどまらない中長期的なキャリア形成の支援を心がけている。
 趣味は、水泳(年間300キロ)、ゴルフ、料理。日課は、朝晩の愛犬との散歩。下戸のため遅くまで飲みに行くことがなく、365日、早寝早起き。座右の銘は、健康第一。公私共に健康第一!明るく元気に!がモットー。
【URL】 https://newstar.jp/

著者プロフィール画像
この記事の担当
伊藤 梢
株式会社ニュースター
選考推進パートナー兼 WEBマーケティング
 2010年明治大学卒業後、D2C・EC業界特化のマーケティング支援会社に入社し、ECマーケティングの基礎を習得。
 2016年、株式会社出前館へ転職。マーケティング部のリーダーとして、サービスの急成長期における戦略立案から実行までを牽引。結婚・出産を経て、2022年4月より株式会社ニュースターに参画。
 現在は、候補者と企業の間に立ち、面接調整や選考の進捗管理を一貫して担当。「スピーディーかつ丁寧な対応」を信条に、事業会社の現場を知るからこその細やかなサポートで、ストレスのない円滑な選考プロセスを支えています。新規候補者獲得に向けたウェブ施策の企画・実施も担当。マーケティング視点でサイト運営を通じて、EC通販キャリア人材とEC通販企業の出会いのチャンス、ご縁作りに取り組んでいる。

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