株式会社ぽちる 玉木 修 社長インタビュー
2022.9.22 カテゴリ:EC企業インタビュー
こんにちは!EC通販人材エージェントの伊藤です。EC通販業界での転職に役立つ情報を発信しています。
今回は、弊社代表の寺田と私で、エアコン、家電、電設資材などの生活必需品のECをされている株式会社ぽちるの玉木社長に、
BtoCのEC事業を立ち上げたきっかけと事業の特長、今後の展望についてインタビューしてきました。
社会インフラに欠かせない商品を取り扱うEC企業のインタビューです!
1995年4月田中商事株式会社入社。2012年史上3番目に若い取締役に就任。2019年4月取締役クリエイション事業部長に就任。その年の10月、田中商事の子会社「株式会社ぽちる」を設立して、代表取締役社長に就任。Amzon・PayPayモール・楽天市場にて「エアコン・家電通販のたまたま」を立ち上げる。
「実力主義」「仲間と楽しむ」の両立
-まずは、田中商事株式会社について、どのような会社か求職者向けにお話しいただきたいです。
1950年(昭和25年)に、河合会長が静岡県静岡市で個人商店「田中商店」を創業したのが始まりです。
河合会長の夢であった東証一部上場を2004年(平成16年)に実現しました。
-玉木様がご入社された時は、未上場であったと思うのですが、どのような規模だったのですか。
はい。まだ未上場でしたが、当時の人事の方からは「上場を目指している」と伺っていました。売上は140億くらいであったと思います。
-玉木社長のご入社のきっかけは何だったのでしょうか。
バブル崩壊後かつ私は第二ベビーブーム世代で、超就職氷河期で、なかなか就職先が見つかりませんでした。
今でも覚えていますが、新宿のNSビルで企業合同説明会がありまして、田中商事株式会社と出会いました。「商社」が当時の私の目標であったので、話を聞いて、そのまま面接を受け、ご縁があって、内定をいただき入社いたしました。
-そうだったのですね。入社後はどのようなお仕事をされたのですか。
神奈川県の相模原営業所に配属されまして、丸7年一般社員として営業職をしました。
入社7年目の4月1付で主任になり、2週間後に相模原営業所の所長になりました。
翌年の2月に東京都町田営業所が開設されることになり、新規店の所長を任されました。
-新規店は大変そうですね。
そうですね。今の株式会社ぽちると同様完全0ベースで、お客様も支援先も1から開拓していきました。私と営業2名の3名体制で新規開拓をしていきました。
元々、私は新規開拓が好きで結果も出していたので、新規店の店長を任せていただいたのだと思います。2年目に黒字化を達成し、表彰されました。
-すごいですね。
その後、新小岩にある城東営業所の所長に異動になりました。
-当時は、どのような所に何を売っていたのですか。
お客様は電気工事業者様ですね。エアコン工事業者様、大手企業だとサブコン(サブ・コントラクター)などにも販売していました。
その中でも、メインのお客様は地元の電気工事業者様ですね。
-大手ではなく、地元の企業がメインなのですね。
はい。地元の企業でも、大きいところだと売上が5億~10億円規模の業者様もあれば、地元の家電屋様もあります。
そういった電気工事業者様にルートセールスで回っていく営業をしていました。
生活には欠かせない「インフラ」の工事ですから、需要は必ずありました。
田中商事株式会社は、商社として工事に必要な材料を、そういった電気工事業者様に卸していました。
-なるほど。玉木社長が実績をどんどん積まれたコツは何だったのでしょうか。
私は、仕事をやっていく上で、例えば「役職を部長になろう」とか「所長になろう」というような具体的な目標はなかったです。
-出世思考ではなかったということですか。
そうなのです。私はとにかく仕事を楽しんでいました。
仕事をする上でベースに、「この役職を勝ち取ろう」とか「これくらい給料を上げよう」というのは全くなかったです。
ただ単純に目の前にある仕事とか、「先々こうしていこう」というものを組み立てたり、行動に落としたり…とにかく仲間と一緒に仕事をするのが好きで楽しんでいました。
結果が自然に付いてきたのだと思います。
-なるほど。御社で活躍されていらっしゃる社員の方は、そういった方が多いのですか。
今の若い子たちとはだいぶ時代が違うので、何とも言えないですが…
1つ言えることは、田中商事株式会社は「実力主義」の会社です。一番根底にそれがあります。
私が所長になった27歳は早い方ではありますし、
城東営業所の所長になってから3年目の30代前半で部長になり、40歳で役員になりました。
もちろん私だけでなく、現在の所長も20代で任されている人は多いです。
やる気があり実力が伴えば、役職を勝ち取れる風土があるのが田中商事株式会社の特色だと思います。
実力があればどんどん抜擢していくという考えが根強いですね。
-「実力主義」と「仲間と楽しむ」がうまく両立されているのがすごく良いですね。
そうですね。仕事は仕事で厳しくやって、数字を作るのは仲間意識を持ってやっていました。
もちろん苦しいときもありましたが、それを苦と感じなかったのが良かったのかも知れないですね。
今は社長直下の「取締役兼クリエイション事業部」の責任者に異動になり、新規事業を始めました。こちらも完全0ベースでスタートしています。
BtoC事業の立ち上げ
-それが株式会社ぽちるですね。
そうです。BtoCのEC事業です。
-BtoCの事業を立ち上げるきっかけは何だったのでしょうか。
時代の流れがだんだんとそういった方向に行っているというのを私自身も肌感覚で感じていたのと、潜在需要があり、非常に伸びる市場だなと感じていました。
また、クリエイション事業部の立ち上げの際に、会社からも売上を求められていたので、
「田中商事の仕入れ力」と今後「伸びていく市場」の2つのシナジーを1番活かせるのはECではないかと考えました。
現状は、弊社で扱っている商品の国内販売のEC化率はまだ8%程度です。
今後まだまだ伸び率があると私は考えています。
-Amzonや楽天などのモールや、ヨドバシカメラやヤマダ電機などでも電気用品を販売している印象ですが、それでもまだ伸びていくのでしょうか。
はい。伸びると思います。
現在、株式会社ぽちるの販売商品としては、エアコン、電設資材、家電が3つの柱となっています。
エアコンに関しては、買い替え市場があり、一般的には10年に1回買い替えると言われています。
市場としては、もちろん新規もありますが、リニューアル市場も大きくあります。
株式会社ぽちるの特色としては物販だけではなく、工事も一緒に請け負っております。
現在はスタンダードな住宅用エアコンが中心で、ここもまだ需要はありますが、
今後は業務用の大きなエアコンなど、様々なメーカーのエアコンの扱いが田中商事株式会社にはありますので、やり方次第でまだまだ伸びていくと考えています。
-なるほど。2本目の電設資材に関してはいかがですか。
電設資材に関しては、これこそ田中商事株式会社の強みが活かせる商材です。
正直私は、BtoCの需要としてはそこまでないのかなと思っていたのですが、始めて見たら、意外と需要があり、売上が伸びていきました。
-どういった方がお客様になるのですか。
電設資材には、身近な照明やコンセント、換気扇なども含まれます。
その為、個人のお客様ももちろんいらっしゃいます。
電気工事業者様などの法人の方でも、世代替わりして若い社長の方がいらっしゃり、
若手の社長さんは「ネットのECで買った方早くて安い」と考えていらっしゃる方が増えてきています。
実際に株式会社ぽちるで購入いただいたお客様の声を伺ったことがあるのですが、
「自分でネットで見て頼んだ方が早いんだよ」と仰っていたんです。
「翌日には頼んだ商品が入ってくるし、値段もサイト上でわかるし、楽なんだよね」いう声を実際に聞いて、「このニーズは加速するな」と確信しました。
電設資材のEC需要に関しては、BtoCだけではなくて、BtoBでも買っていただける会社様が増えることを、特にここ最近実感しています。
-BtoBに関しては、玉木社長は元々現場にいらっしゃったので、強いですね。
そうなんです。私が現場に10年以上いましたので、何が売れるのかという経験値、経験則があります。
また、田中商事株式会社のデータでどういうものが売れているのかを確認することができるので、市場のニーズに応えながら販売出来るのが強みですね。
-なるほど。
私は将来に目を向けています。この先、EC化率は確実に上がり、大きな市場になっていきます。
株式会社ぽちるがもっと大きくなっていき、実績を積んでいった時に、田中商事株式会社としても、この経験が活かせると思っています。
-そうなのですね。3本目の家電に関してはいかがですか。
家電に関しては、正直まだまだなのですが…生活に必要不可欠な商材ですので、
家電も販売していこうということで、株式会社ぽちるを立ち上げた時から、力を入れています。
-家電は具体的にはどんなものを販売しているのですか。
生活家電、季節家電、調理家電の3つの柱で販売しています。
-株式会社ぽちるオリジナル商品の販売も検討されているのですか。
作ろうと思えば、すぐに作れるのですが…
優先順位としては、まだそのタイミングではないと思っています。
製造できる先は既にありますので、いつでも作ることは可能です。
将来的には自社オリジナル商品も検討しています。
-ありがとうございます。
工事込み商品の強化と適時な研修の実施
-株式会社ぽちるについて教えていただきたいのですが。
今は私を入れて5名います。
社内の雰囲気は…僕がいない時は伸び伸びやっているのではないでしょうか(笑)
株式会社ぽちるは平均年齢は36歳と若く、休憩時間も楽しそうに賑やかに話しながらやっています。
もちろん仕事の時間は切り替えて、メリハリを持ってやっていると思いますね。
コミュニケーションは密に取れていると思います。
現在は、蒲田の田中商事株式会社のクリエイション事業部に間借りをしていて、
社内には同じフロアに田中商事の社員もいます。
なので、社員が工事の内容でお客様から質問があった際や、資材の事でわからないことは、田中商事株式会社の社員に直接聞いたりもしています。
-どのように社員とコミュニケーションを取っているのでしょうか。
私が1日蒲田営業所にいられない日も多いので、基本的に朝30分程度、ミーティングをして状況確認、指示もそこで行っています。
株式会社ぽちるの課長とは毎日夜に仕事の状況、成果と仕事の終了報告をもらい、対策等を検討しています。
-コロナ禍でしたが、順調に売上は伸びていったのでしょうか。
1期目は私1人で立ち上げて、2期目に社員が2名増えて大きく売り上げを伸ばすことができました。
具体的には売上でいうと、2期目で8億円近くまで伸びました。
今期は5ヵ月経ちましたが、順調に売上が伸びています。
-今期売上が伸びているとのことですが、どのような打ち手をしたのですか。
様々な対策で売上が伸びていますが、具体例を1つ挙げると、工事込みの商品の強化をしています。
物販だけでなく、工事込みの商品を販売することで、売上と利益を伸ばしています。
-工事込みの仕事だから客単価が上がるのですね。
そうですね。お客様単価も工事込みになるので、上がっています。
-工事込みですと、専門的な知識が必要だと思うのですが。
最初は無知で全く問題ないです。
今入ってくれた社員も全員、電設資材に関しては未経験で知識は全くありませんでした。
日々経験を積んで知識を得ていくのもありますし、研修も行っています。
-研修もあるのですね。
はい。工事業者様に事務所に来ていただいて、エアコンを実際に交換していただきました。それを目の前で社員に見てもらいました。
工事をする際の注意点や必要な材料を実際に目で見てもらって、覚えてもらいました。
社員も「非常に為になった」と満足度の高い研修で、一気に社員のレベルが上がりましたね。
そういった研修は今後も適時行っていきます。
-田中商事株式会社の方で、人材育成プログラムがあったと思いますが、その研修も受けられるのでしょうか。
そのプログラムは実は私がプロジェクトリーダーとして作りました。
今はリニューアルされていると思いますが。
-そうなのですね。
株式会社ぽちるの社員はこのプログラムは受けていません。
子会社という立場でもありますし、かなり深い内容の研修になるので、そこまでの知識を今は必要ないと思っています。
-知識というのは、電設資材の知識ですか。
そうですね。電設資材の知識は、田中商事株式会社のプログラムの内容までは必要ありません。
株式会社ぽちるでは、例えば、電設資材の中でも「アンテナ」の知識が必要だなと思った時は、
「アンテナ」のメーカー様に来ていただいて、研修をしていただくというように、
ピンポイントで必要な研修があれば適時取り入れていこうと思っています。
先ほども言いましたが、同じフロアに田中商事株式会社の社員で、元電気工事会社で工事経験がある人もいるので、いつでも聞くことが出来ます。
未経験や知識がないことは心配しないでいただけたらなと思います。
-電設資材に関する知識は不要とのことですが、採用される上で(面接される上で)、重視されるポイントはありますか。
今は、ECの実務経験値がある方に入っていただきたいです。私に持っていないものなので。
私はECを初めて僅か3年で、どうしても自己流に勉強してやっている部分があります。
実務経験でやられている方には敵わないので、ECの実務経験値がある方に入っていただいて、新たな経験値、血を株式会社ぽちるに流していただきたいなと思っています。
それが株式会社ぽちるの大きな成長に繋がるので、今はやはり経験がある方にご入社いただきたいです。
あとは、株式会社ぽちるはまだ4年目のスタートアップの会社になりますので、
やる気のある方に入っていただきたいです。
本社の入り口「基本精神 やる気のないものは去れ」の彫刻について
-本社の入り口に「基本精神 やる気のないものは去れ」と彫られていたのですが、田中商事株式会社の行動指針としてあるのですか。
私が入社した当時はいわゆる体育会系な面もありましたが、今はないですね。
必ず面接を受ける前に通るので、びっくりされる方もいらっしゃると思います(笑)
パートさんでたまに面接にいらっしゃらない方がいらっしゃるので、もしかしたらあれを見て、が原因かも知れないですね(笑)
逆に、電気工事業者様で、弊社に来てあの文言が気に入って取引を開始していただく会社様もいらっしゃいますよ。
-なるほど。
その社風はこの20年~30年で大きく変わりました。
今は、上の層も創業当時と変わっていますし、取締役の私が言うので間違いないです。
-どのような性格の方が御社とマッチするのでしょうか。
田中商事株式会社で言うと、バイタリティがある方が向いていると思います。
受け身の方はなかなか厳しいかなあと。
組織の中で勝ち抜いていくには、バイタリティが必要ですね。
商社ですので、どこの商社で買っても商品は同じです。
会社ももちろん大切ですが、その人の人柄だとか魅力がお客様を惹きつけるので、
熱量や情熱がないと魅力がなくなりますよね。
-なるほど。
仕事で付き合いたいなと思っていただけるようにならないと、勝ち残れないなと思います。
-それはECも同じでしょうね。
そうです、ECも同じです。株式会社ぽちるはスタートアップの会社ですので、バイタリティは必要です。
-バイタリティ以外で、玉木社長が一緒に働きたい社員像はありますか。
協調性のある人ですね。
やる気があってバリバリやっていても、ワンマンで突き進んで振り返ってみたら誰も付いてきていないような人は困ります。
そういったバランス感覚のある、協調性がある方と一緒に働きたいです。
-株式会社ぽちる様でのキャリアアップ例みたいなものがあれば教えてください。
まだスタートアップの会社なので、キャリアアップ例が実際にはないのです。
これから役職者は作っていきたいと思っています。
株式会社ぽちるは、田中商事株式会社としても力を入れていく子会社で、将来性を見込んでいる会社です。
今は5名ですが、これから社員を増やしていき、売上規模を伸ばしていく先でキャリアアップ事例を作っていきたいと考えています。
-ありがとうございます。
早く、事務所に入りきらないくらいの人員に増やして、
他に事務所を借りられる規模感にしていかなければならないと思っていますが、
そう遠くない未来に独立できると私は思っています。
その為には、私1人の力では無理なので、仲間を増やしていかなければいけない。
そういう意味でもECの経験値がある方を求めています。
-ありがとうございます。玉木社長がお考えになられるEC業界の今後の動向、展望をお聞かせいただけますか。
先ほどもお話しましたが、小売市場全体に占めるEC化率はまだ約8%ということで、まだまだ伸びる市場だと思っています。
家電でも約4割といわれている市場ですので、まだ伸びしろのある市場です。
株式会社ぽちるでいえば、10年毎に買い替えが必要なエアコン、インフラに必要不可欠な電設資材、家電を主力で扱うことで、まだまだ将来性が十分あるだろうと思っています。
-最後に、EC運営担当を求めていらっしゃいますが、御社のようにSKU(Stock Keeping Unit)が多い企業のEC運営担当には、どんな方が向いていると思いますか。
まじめに地道にコツコツやっていける人は非常に向いていると思います。
対お客様に対しても真摯に向き合える人、素直に受け入れられる人は伸びていきますね。
今の株式会社ぽちるの社員も皆、まじめにコツコツ仕事をしてくれるタイプです。
-求職者の方にメッセージをお願いします。
スタートアップの会社とはいえ、親会社である田中商事株式会社が一部上場企業であり、
私自身も田中商事株式会社の代表取締役社長の直属の部下であるので、安心感がある会社になります。
今期は売上も2桁成長、そして黒字が確定で伸びている会社です。
ありがとうございます。本日は以上になります。
お忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございました。
安定したリアルな商売をベースにECをうまく取り入れた好例。
だからこそECという仕組みに依存せず「人」の可能性に期待し、地道にコツコツ仕事を積み上げていく人をしっかり評価してくれそうな印象を持ちました。
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