EC・通販の市場規模や業界カテゴリ別特徴とは?
2019.2.14 カテゴリ:EC&通販の転職コラム
※画像はイメージです。
最初に、通販・EC業界の市場規模を大まかに把握してみましょう。
ただ、ここまで見てきたように、現在、従来の紙のカタログやテレビ・ラジオを媒体としていた通販会社がもれなくEC・ネット通販に参入しているため、通販・EC業界、またその周辺の通販支援会社まで含めると、全体像を正確に把握するのは容易ではありません。そこで、いくつかの公表されている調査から、部分ごとに見ていくことにします。
まずは、公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)が2016年8月に発表した、「2015年度 通販市場売上高調査」を見てみます。やや古いデータですが、通販・ECを行う主な企業400社以上が正会員社として入会している協会のデータですので、概要を把握するには適したデータです。
この調査によると、2015年度1年間の通販の売上高は6.5兆円、マイナス成長を記録した1998年度以来ずっと増加傾向が続いているということです。市場拡大の要因として、ECプラットフォーム系企業の参入、店舗系ネット通販、BtoB通販の躍進、通販支援会社・サービスの充実などあると分析されています。
出典)公益社団法人 日本通信販売協会(JADMA)「2015 年度通販市場売上高調査」
また、ECに関しては、経済産業省による「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」に詳細なデータがあります。
資料にある「BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率」によれば、2016年のBtoC-EC、すなわち個人消費者向けのEC市場は、全体で15.1兆円にも上ります。そのうちおよそ半分を、一般に「通販」といわれてイメージするような「物販系分野」が占めており、8兆円を超える市場規模となっています。
「サービス系分野」とは、モノ以外のものを販売するECのことです。例えば、旅行や宿泊、チケット、保険などがこの分野に含まれています。市場規模は2016年で5.3兆円を超える規模に上ります。
「デジタル系分野」とは、リアルなモノではなく、かといってサービスでもなく「デジタルな商品」を販売するECのことです。例えば、電子書籍やデジタル音楽・動画配信、オンラインゲームなどがこの分野に含まれています。市場規模は1.8兆円近くに上ります。
BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率
出典)経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
通販・EC業界カテゴリ別
「通販」というと、一般的に個人の買い物が頭に浮かぶかもしれませんが、企業を顧客とするBtoBのEC、あるいはネットオークションやリユース関連のCtoCもECには含まれます。ここからは、「BtoC」「BtoB」「CtoC」の各市場についてまとめます。また、「売る主体・買う主体がBかCか」という切り口とは異なりますが、近年注目を集めており、成長も著しい「越境EC」の動向についても見ていきましょう。
BtoC
前出の、経済産業省による「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」の中にある「BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移」のグラフを見てみます。
これによると、市場規模・EC化率は年々高まっており、年を追うごとにその“成長率”の数字も高まっています。
ちなみに「EC化率」は、全体ではなく「物販系分野」のみに限定した数字です。この調査における「EC化率」とは、「全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合」を指します。つまり、従来の紙などによる通販がEC化した率ではなく、電話やFAXでの受発注のほか、実店舗での流通なども含めた全ての商取引のうちEC化されている率ということになります。
BtoC-ECの市場規模およびEC化率の経年推移
出典)経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
次に、BtoC ECの今後の予測です。
EC化率が今後どこまで伸びるかについては、各商品カテゴリのECニーズの高さや、物流面のコスト・利便性などにも左右されるため一概にはいえないものの、ECそのものがまだ成長の余地が大きく、全体としてはさらにEC化率は高まっていくでしょう。
野村総合研究所が2015年11月に出した「2021年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望」のリリースの中で、BtoC-ECの市場規模は2021年には25.6兆円(2016年の1.7倍近く)に達すると予測されています。
国内B2C EC市場規模予測
出典)野村総合研究所「2021年度までのICT・メディア市場の規模とトレンドを展望」
BtoB
BtoBのECとは、基本的には企業間の電子商取引ということです。前出の経済産業省による調査では、「狭義のBtoB」「広義のBtoB」という分類がされており、狭義のBtoB ECを「インターネット技術を用いたコンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるもの」、広義のBtoB ECを「コンピューターネットワークシステムを介して、商取引(受発注)が行われ、かつ、その成約金額が捕捉されるもの」と定義しています。
分かりにくいですが、違いは「インターネット技術を用いたネットワーク」に限定しているか否か。
「広義の」といった場合は、例えば銀行間のネットワークなどインターネット以外の専用のネットワークを通じた電子商取引を含みます。「EC」には違いありませんが、一般的な「通販」のイメージとは異なります。
「狭義の」という場合は、インターネットを媒体とした商取引に限られます。イメージとしては、オフィス用品の通販を行っているアスクルや、工具通販のMonotaROなどから、工業部品・生産材を販売するミスミなども狭義のBtoB ECと思ってよいでしょう。
2016年の「狭義のBtoB EC」に絞って見たとしても、市場規模は204兆円に達しています。BtoBだけあって、ものによっては単価が高く、取引量も多いため市場規模では桁違いです。中でも伸びが堅調だった業種は「輸送用機械」「鉄・非鉄金属」だったと分析されていますが、そこまでいくと一般的な「通販・EC業界」とはちょっとまた違うイメージですね。ただ、「EC」という視点では、BtoBの市場はこれだけ大きなモノだということは、認識しておいてよいでしょう。
BtoB-EC市場規模の推移
出典)経済産業省「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
CtoC(リユース市場)
CtoCのECとは、ネット上のプラットフォームを使って個人間で取引をすることです。古くは、地域の新聞や雑誌で「売ります・買います」の掲示が行われていましたが、インターネットの登場以降、個人間の売買ニーズのマッチングが格段に容易になりました。さらに、ヤフオクなどのネットオークションが個人間取引を行う層を広げました。
さらに近年は、シェアリングエコノミーの登場によって、遊休資産をお金に換える動きが広がっています。その一貫としてメルカリのようなフリマ(フリーマーケット)アプリが台頭し、ネットを介して自分が使っていないものを別の個人に売る「リユース市場」を拡大しています。
前出の経済産業省の調査では、2016年のネットオークションの市場規模は約1.1兆円(企業による出品も含む)、CtoCの市場規模は3,458億円と推計しています。
越境EC
越境ECとは、国境を越える国際的なECのことで、海外の消費者に向けて物を売る形態です。世界的にもECの市場は急速に拡大しており、市場規模では中国と米国が突出しています。eMarketerの国別のBtoC EC市場規模は、中国が9,276億USドルで世界1位、米国が3983.5億USドルで2位となっています。米国が前年比16%の成長であるのに対して、中国の前年比は40%となっており、とりわけ中国のEC市場が急速に成長しているといってよいでしょう。
前出の経済産業省の調査では、日本・中国・米国の3カ国を対象に調査をしており、2016年に中国の消費者が日本からECで購入した額が1兆366億円、米国が日本からECで購入した額は6,156億円としています。
日本の通販・EC会社も中国のEC市場に目を付けており、数年前から中国向けのサイトを立ち上げたり、現地の会社と提携するなどの動きを見せています。